終わっちゃった「ダイエット幻想読書会」

1月から隔週土曜の10時から12時,「著者と読む『ダイエット幻想ーやせること,愛されること』読書会」全10回に出席していた。第9回,一番面白そうだった「ふつうに食べるをバカにしない」だけ所用で欠席してしまったが,全部を通して非常に面白かったし勉強になった。人生が深まった。

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この本は,ダイエットや摂食障害についての本と見せかけて,それに限った話ではないということが,終盤につれてだんだん見えてきた。

磯野先生は文化人類学の視点から「食べる」ということや摂食障害について検討しておられる。私は心理学ではある。立場の違いはあるが,私は,磯野先生も,「からだのシューレ」もとても好きで,憧れていて,これまで何度か受講した磯野先生のオンライン講義もとても興味深かったことと,もともとこの本に関心があったことから,参加した。

いま,しみじみ余韻にひたっている。

得たものはいろいろあるので,まとまらない。

最初の方は,承認欲求や認められたいことの話。承認欲求をみんな持っているけれど,それをあからさまにすると,排除されるから,承認欲求を持っていないということを隠しつつそれでも認められたい,ということ。

「ありのままの私」「自分らしさ」の罠。そんなものはどこにもないのに,「ありのままでいいんだ」「自分らしさを大事にしよう」ということが言われること。

「かわいい」の落とし穴。女性はかわいいことが大事にされるこの社会。それがいいとか悪いとかではなくてそういう現状。参加者さんが絞り出すように表現した過去の共有もあった。参加している中で,どう表現するか,言葉を失ったりもした。

第三章の最後の文。「でもこれだけは覚えていてほしいのです」という文で前段落が終わり,1行あいて「あなたは大人になっていい」と書かれているところが,私は衝撃的で好きだ。女性も男性も「大人」になっているのか。大人とは? 

私はずっと容姿に自信がなかったし今もないから,可愛いと言われたり思われたりすることには興味がなかったし,容姿についてはずっとあきらめているが,その代わり小さい頃から成績が良かった。大学に入ると,勉強というかテストで点をとるのがうまいだけで,自分の頭で問題を発見して地道に考察するということはできないことがわかったが,とりあえず,小学校中学校高校と「優等生」でいられたから,それで埋め合わせをしていたのかもしれない。

数字の魔力で世界が消える。この章も興味深かった。数字は何かを評価したり目標にしたりするうえでは役に立つが,ストーリーが消えること。

糖質制限のこと。

中盤あたりからだんだん,「世の中で“健康””からだにいいこと”として流布している情報」とどう折り合いをつけるか,ネットやテレビや報道で,健康にはこれがいいとか,あれがいいとか,よく言われるが,どう情報を消化するか,この中で自分が何をどうして生きていくのかということを考えた。

ふつうに食べる回を欠席したのがなんとも残念だ。

終章のタイトルが好きだ。「世界を抜けてラインを描け!」。素敵じゃないですか。ラインを描く。そして終章を読んでいて私の中にあったのは「らせん」のイメージ。もしくは,えーと,大縄跳び…小学校のときに,大繩でみんなが次々飛んでいって八の字を描いてというのがありましたよね。あれ…。もしくは,回り続ける自転車の車輪。もしくは扇風機。下に貼りつけたのは「大縄跳び」のイメージと,あと,終章に私が一番ぴったりくると思う音楽

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「生きるとは,自分と異なる様々な存在と巡り会い,その出会いに乗り込みながら,互いを作り出すこと。そしてその現れを手掛かりにし,次の一歩を踏み出し,進むこと。生きるとは,そんな出会い,現れ,歩みの連なりであるはずです。」(p.210)

という言葉でこの本の本編が終わるが(その後に「おわりに」が続く),ここまで読んで,この本はダイエットの本でも痩せ方の本でも健康の本でもなくて,「他の人との間で生きるということ」についての本だったのだと思った。

オープンな読書会ではないので,読書会の最中に何があってどういうメンバーがいて,ということはある程度クローズにした方がいいかと思うのであまり書かないが,いろいろな方々がいらっしゃった。すべての方々と言葉を交わせなかったのは残念だけれども,とてもいい出会いだった。磯野先生とも。憧れだったのでちょっと硬直したけれども。

最終章で「タグ付けする関係」「踏み跡を刻む関係」ということが出てきた。私なりに最終章の「踏み跡を刻む関係」で筆者の磯野先生は以下のようなメッセージを伝えたかったのではないかと思う。私の勝手な妄想かもしれないけれども。そしてこう考えることで,私は,この世の中しんどいし,迷うこともたくさんあるし,毎日笑って生きられないし,死にたくなることもあるし,人に裏切られることもあるけれども,それでもなんとか,人の中で,色々な人の中でダイナミックに”生きる”ということをわくわくしながら楽しみながら生きていきたいと思ったのだった。

「自分から,自分で,自分の道を,世界や周囲を巻き込みながら楽しくのびやかに生きていこうよ! そして,そういうふうにのびやかに生きている他者とたくさん出会って,化学反応を起こしてみようよ。化学反応で何が起こるかわからないけれど,それをも楽しもう。他者はこわくない。他者の評価を気にしなくていい。愛されようと他者の目を気にして無限比較に陥ることは苦しい。もう歯をくいしばって頑張らなくていい。あなたはあなたのままでいい。いろいろな人がいる。あるものを持っている人もいるしもっていない人もいる。自分も周囲も刻々と変わるものだ。だから「自分」の「ライン」を描くというのだ。そんな世界はきっと面白い。自分も他人も世界も変わるし変えていい。変わることを恐れなくていい。栄養学の知識や健康という数字・言葉で切り取られた頭でっかちで感覚のない機械的な世界を生きているのではない人間。身体をもって,感覚をもって,無限定空間の何が起きるかわからない世界を生きることを楽しもう。」

わぁ。すんごい私なりの解釈だ。

終わりに。毎週土曜日の10時から12時という忙しい時間帯を共有して下さった磯野先生と参加者の皆さんと,それから,「10時から12時までオンラインだから許して!」と言って,しゃーないなと認めてくれた夫と息子,落ち着いて2時間私が読書会に参加することを許容してくれた夫と息子に心から感謝します。ごめんなー。その間,夫と息子は遊びに出ていたり「あつまれどうぶつの森」を一緒にしたりしていました。